タイムシリーズモメンタム (TSMOM)
factor.formula
タイムシリーズモメンタムファクター (TSMOM):
個別株の超過リターン:
リターンの指数平滑移動平均:
リターンのボラティリティ:
ここで:
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月を表し、時系列データにおける特定の時点を識別するために使用されます。
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特定の銘柄を表し、クロスセクションデータにおける特定の個体を識別するために使用されます。
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銘柄$i$の月$m$における、自身の過去のリターンに対する超過リターンを表します。これは、当月の実際のリターン$r_{m,i}$と、過去のリターンの指数平滑移動平均$\bar{r}_{m,i}$の差です。超過リターンは、個々の銘柄のリターンが自身の過去の水準からどれだけ乖離しているかを捉えることを目的としています。
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銘柄$i$の月$m$におけるリターンを表し、通常、その月の株価の変動率として定義されます。
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銘柄$i$の$m$ヶ月前の月次リターンの指数平滑移動平均を表します。これは、リターンの時系列を平滑化し、ノイズを除去し、潜在的なトレンドを捉えるために使用されます。その計算方法は、過去のリターンの加重平均を取り、その重みが時間とともに指数関数的に減衰するため、最近のリターンが現在の移動平均に大きな影響を与えるようになっています。
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銘柄$i$の$m$ヶ月目のリターンのボラティリティを表します。これは、過去のリターンの指数平滑移動平均からの乖離の加重平均の平方根であり、重みは時間とともに指数関数的に減衰します。この指標は、一定期間におけるリターンの変動の程度を測定し、銘柄のリスクレベルを反映します。
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指数減衰係数を表し、0から1の間のパラメータで、過去のリターンが指数平滑移動平均に与える影響の程度を決定します。$\delta$の値が小さいほど、過去のリターンの減衰が速くなり、移動平均は最近のリターンに注目するようになります。
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過去の平均リターンの計算に使用される月数を表し、ここでは12ヶ月です。$\frac{1}{N}\sum_{j=1}^{12}\hat{r}_{m-j,i}$は、過去12ヶ月の平均超過リターンを表します。
factor.explanation
タイムシリーズモメンタム(TSMOM)ファクターは、株価自身の過去のリターンのトレンドを分析することで、将来のリターンを予測します。その中心となる考え方は、過去のある期間に株価がプラス(マイナス)の超過リターンを示した場合、そのトレンドは将来も継続する可能性が高い(ただし、研究では通常その逆であることが示されています)というものです。このファクターはまず、過去12ヶ月間の超過リターンの平均を計算し、その符号を方向性を示す指標とします。次に、当月の超過リターンを当月のボラティリティで割って正規化します。これは、モメンタムシグナルをよりロバストにし、ボラティリティの高い株のウェイトを減らすことを目的としています。したがって、TSMOMファクターは、株価の短期的な反転効果をとらえ、それに対応する投資ポートフォリオを構築するために使用できます。